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グリッドの技術

グリッドってどんなもの?

X線が被写体を透過する時に、被写体の中の様々な物質により、乱反射したX線が発生します。これを散乱線といいます。この散乱線が受像面に到達すると、本来感光してはいけない部分が感光してしまい、濃度差の無いぼやけた写真となり、診断し辛いものになってしまいます。この散乱線を受像面に到達する前に効果的に除去するフィルターの役目をします。

グリッドはJIS規格のZ4910:2015「散乱線除去グリッド」として規格化されています。JIS規格は1962年にICRUのX線専門委員会の勧告に基づいて「X線グリッド」として制定されましたが、その後1978年にIEC基準に整合した規格改正が行われ数回の見直しを経て現在に至っております。現行の規格はIEC60627/Ed.3による汎用及び乳房用散乱線除去グリッドの統合基準として制定されており、主な内容は物理的特性の、選択度 (Σ)・コントラスト改善比 (K)・グリッド露出係数 (B)・イメージ改善係数 (Q)を決定する試験条件を、きわめて厳しい制約のもとに規定しています。従来の規格で使用上必要と考えられていた幾何学的特性の平面度・平行度・直角度・均一性については、巻末に附属書JAとして記載されております。

また、薬機法上では「X線用グリッド」と呼称されております。

グリッドはリスと呼ばれることがありますが、これは1930年代に(E.Lysholm)リスホルム博士(スエーデン)によって現在のグリッドの原型が考案され博士の名前に因んで「リスホルムブレンデ」と呼ばれ普及し、日本国内では更に略して「リスホルム」とか「リス」と呼称されていたのが由来です。グリッドとリスは使用目的・構造も全く同一のX線撮影用具です。

グリッドはどのようにできているの?

X線を透過しやすい物質とX線を吸収しやすい物質を指定集束距離に合わせ、交互に規則正しく積層し、接着した板状のものです。MS-Xレイ・グリッドは、インタースペーサー(中間物質)とよばれるX線を透過しやすい物質に厚さ0.1~0.25mmアルミニウムまたはファイバー、X線を吸収する物質に厚さ28μm~50μmの鉛を使用しています。

これを指定のグリッド比(ハク高さ)に切削加工し、カバー材(主にアルミ)を貼り、塗装などを施したものがグリッドです。言葉では簡単ですが、材料のアルミ板、鉛ハクの厚さ測定検査、X線撮影による集束精度、異物混入の有無など数度の工程内検査を経てグリッドは作られます。

インタースペーサーの素材

インタースペーサー(中間物質)にはアルミや紙(ファイバー)が広く使用されています。

かつては木(Wood)ベークライト製もありましたが、現在では製造されておりません。また、この他各種の合成樹脂も素材として考えられます。

「カーボンファイバー製のグリッドはありますか」というご質問をいただくことがあります。カーボンファイバーは低吸収素材のため、被曝線量面だけを考えれば中間物質材の対象の一つとなります。しかしながら、カーボンファイバーは厚さ精度の不均一性、吸収物質との接合強度、加工難度、コスト等の観点から弊社では使用しておりません。ただし、カーボンファイバーの利点である低吸収性を活用し、カバー材として活用しています。

グリッドの仕様は何できまるの?

グリッド密度

密度は1㎝あたりの鉛ハクの数です。(図a参照)MS-Xレイ・グリッドには、34本、40本、60本、80本の密度の製品が標準品としてあります。密度が高くなるほどフイルムに現れるグリッドの縞目は目立たなくなり、読影し易い画像が得られます。密度が低く、撮影したフイルムに縞目が写り込んで読影の妨げとなる場合には、グリッドを運動させ、縞目を消去するブッキー装置という器具を使用しますが、60本以上の密度の高密度グリッドの静止使用がこれに代わり、広く利用されています。

昨今、受像部がフラットパネルディテクターとなり、デジタル処理でグリッドの縞目を消去できることから、精度の高い40本や、縞目除去ソフトを使わない場合では80本や、装置メーカー指定密度の高密度グリッドが用いられることが多くなりました。

グリッド比

グリッド比は、鉛ハクの間隔に対する鉛ハクの高さの比です。簡単にいえばグリッドの厚さのことです。グリッドの性能の中でも主な要素の一つで、格子比とも呼ばれております。(前項図aを参照)

このグリッド比は、X線撮影条件の中で撮影管電圧に対応して変化します。低い管電圧の条件では、3:1から8:1程度で対応し、高い管電圧に対しては、10:1から16:1といった格子比の高いグリッドが使われます。MS-Xレイ・グリッドには、標準品として3:1から16:1までの製品があります。

集束距離

集束グリッドにおいては全ての鉛ハクの面の延長がX線管焦点に向かっていて、一つの直線に集束しています。この集束線からグリッドのX線管側の面(入射面と言う)までの垂直線の長さを集束距離と言います。つまり、X線管焦点とグリッドの中心を結ぶ距離のことです。MS-Xレイ・グリッドの集束距離は標準品では65cmから200cmでの各種があります。

グリッドはどのように選べばいいの?

おすすめ仕様の例

部位/撮影条件 密度 格子比 集束距離 備考
頸椎 40本 8:1 120㎝ 使用撮影管電圧70Kvが目安
胸部 40本 10:1 200㎝ 使用撮影管電圧120Kvが目安
腹部 40本 8:1 100㎝ 使用撮影管電圧90Kvが目安
胸腹部を1枚のグリッドで 40本 8:1 150cm 胸部180㎝(遠位f2)、腹部120㎝(近位f1)で撮影。但し、グリッドは遠位の方が減弱率は若干ラフな為、胸部を200㎝で撮影することも可能だが、減弱が大きくなる。
整形撮影と胸部撮影を
1枚のグリッドで
40本 8:1 120cm 整形撮影は100cm(近位f1)、胸部150㎝(遠位f2)で撮影。グリッドは遠位の方が減弱率は若干ラフな為、胸部を180㎝で撮影することも可能だが、減弱が大きくなる。
  • 上記は代表例。使用する装置や撮影条件により最適な仕様が異なる場合があります。
  • 1枚のグリッドで遠位・近位を撮影する場合、簡単な目安は集束距離±30㎝以内で撮影をすることがおすすめです。

高密度グリッドを選ぶ際のポイント

高密度グリッドは集束精度の高い優れた濃度均一性をもつ高品質グリッドであることが重要です。

そして低密度グリッドと同等のコントラストを確保し、同一の露出倍数とするには、低密度グリッドより1ランク上のグリッド比を選択します。

例えば、40本/cm、8:1に匹敵する60本/cmグリッド比は10:1になります。では何故1ランク上なんでしょうか?グリッドの性能で大切な要素である散乱線の除去率はグリッドに含まれている鉛の量が大きく関係しております。40本/cm、8:1と60本/cm、10:1は鉛当量がほぼ同じになるため、同一条件で効率の良い60本/cmのグリッドが使えることになるのです。

いろいろなグリッド

平行グリッド

集束グリッドに対して、平行グリッドも存在します。弊社でも年間生産数の10%未満ではありますが、ご要望に応じて製造しています。このグリッドは、すべての鉛ハクの面がお互いに平行に整列しており、そのハクの面の延長はX線管に向って垂直に立ち上がっています。したがってX線を照射した時、フイルムの濃度は中央が黒く両側に向って除々に白くなっています。この現象は、X線の照射角に対して垂直にハクが立っているために、X線の通過を妨げているのです。この現象はカットオフ(減弱)といい、撮影距離に関係なく平行グリッド使用ではカットオフ(減弱)を免れず、X線管焦点とグリッドが近くなる程カットオフ(減弱)は大きくなります。

平行グリッドの注意点

平行グリッドの距離の表示には∞の記号が用いられることから、「距離が130cm~∞なので便利なグリッドなのですか?」というようなご質問をいただくことがあります。

独特の表示により誤解が生じて平行グリッドが汎用的なグリッドという印象を与えてしまいがちですが、平行グリッドは、集束(精度)を付ける技術が確立されてなかった時期に、初歩的な積層技術で生産されたグリッドです。平行グリッドは前述のようにカットオフ(減弱)を避けられず、またそのために充分な散乱X線を除去するグリッド比が設定できないこともあります。平行グリッドを使用するのであれば、集束型では難しい撮影、例えば分割撮影、長い撮影距離、病室撮影等に限定されるべきでしょう。

クロスグリッド

クロスグリッドは2枚の直線グリッドをハクが直交するように重ね合わせて作られたグリッドです。散乱線の多い部位や、高電圧撮影を目的に設計されたグリッドで現在はほとんど需要がありません。理由として、ポジショニングの(上下、左右のセンターリングを確実に行わなければならない)難しさや、クロスに重ねた分入射断面積が小さくなり情報量の低下を招きます。シングルグリッドと同一コントラストであっても、線量増加というマイナス条件が発生し、結果として効率的でないとの評価があります。加えて、高密度・高グリッド比の普及でますますクロスグリッドの出番がなくなったのが現状でしょう。

長尺グリッド

下肢撮影や側弯症の全体像など、一般サイズに取り込めない部位の撮影に対応します。構造は、複数のグリッドを被覆する前に同一ハク方向に継ぎ合わせた後に、アルミカバー材(1枚板)で被覆して一体化(1枚)にしたものです。従って継ぎ目の現出は避けられません。

弊社では、60本/cm 8:1~14:1、40本/cm 6:1~12:1、34本/cm 5:1~12:1のグリッドで外形寸法400×1095mm内のものまで製造可能です。グリッドを保護する為、キャップタイプやフル枠のオプションをお薦めしています。

[例] 10×36サイズ・・・四切サイズのグリッドを3枚組み合わせています。継ぎ目は2ケ所になります。

乳房撮影用グリッド

マモグラフィ・グリッドといわれる乳房撮影用に特別に設計された集束グリッド。

画像にあらわれるトラブル

カットオフ(減弱)

集束グリッドを集束距離と異なる距離で使用した場合や平行グリッドを使用した場合、必ずカットオフ(減弱)が生じて鮮明な画像を得る事ができなくなります。これを垂直移動のカットオフと言います。ちなみに、使用距離を上下にずらす事ができる許容範囲を、JIS規格で使用距離限界と言い、グリッドの縞目の両端で、各々、40%減弱するまでの上限・下限を決めています。

ブッキー装置で使用する場合は必然的に運動幅分の減弱が生じますが、これを水平移動の減弱と言います。

ブッキー装置での使用は撮影距離に合った集束グリッドをお使い下さい。

画像上のムラ

グリッドの縞目に起因して起きる画像上のムラは、通常モアレ(干渉縞)といわれています。

グリッド密度のピッチとCRやFPDのピッチの差によってモアレ(干渉縞)が大きくなったり小さくなったりします。

グリッド密度とCRやFPDのピッチの差が・・・

極端に大きい:細かいモアレ

中途半端に大きい:大柄なモアレ

ほとんどない:縞は出ても1~2本で目立たない

CR装置

グリッドのハク方向とCR装置の画像読取り方向が一致することが、主な原因と考えられます。グリッドのハクの方向と、CR装置の読取り方向を、直角に使用することで解消できることが多いです。そのほかにも、グリッド密度を変えたり、CRの読み取りピッチを変えたり、あるいはグリッドのハク方向をIPカセッテに対して斜め位置に置いて撮影するなど、いろいろなパターンにより現出したり目立たなくなったりします。モニター画面上にあらわれるムラがフイルム画像では消えている場合がある様ですが、それはグリッドに起因したものでは無いと考えられます。

FPD

「リス目(グリッドの縞目)が気になる」というケースがあると思います。この場合グリッドの縞目が見えている可能性もゼロではありませんが、多くの場合、大変細かいピッチのモアレ(干渉縞)が現出しています。以下の点をご確認ください。

  • FPDメーカー推奨密度のグリッドを使用しているか?
  • DRのグリッド縞目除去処理が有効になっているか?
  • 縞目除去処理でグリッド密度が選択できる場合、設定されているグリッド密度を使用するグリッド密度が一致しているか?
左右差

永年使用時で加圧によりグリッドが変形することはありますが、左右差が起きる原因としては管球とグリッド入射面との直交度の狂いがほとんどです。装置メーカーのサービスに依頼されることをお勧めいたします。

なお、グリッド自体の濃度左右差やキズを調べる方法として、グリッド上下を逆さ(通常下部貼付けのラベルが上になる状態)にして撮影し、欠陥の対称的移動の有無を2つの画像でチェックされることをお勧めします。グリッドの定期保守管理を行っている施設におかれても、このグリッドチェック方法をお試しになられることをおすすめ致します。