Q1. グリッドに何か公的な規格はあるのですか?
A. グリッドはJIS規格のZ49102000「散乱X線除去用グリッド」として規格化されております。JIS規格は1962年にICRUのX線専門委員会の勧告に基いて「X線グリッド」として制定されましたが、その後1978年にIEC基準に整合した規格改正が行われ数回の見直しを経て現在に至っております。現行の規格はIEC 60627/Ed.2による一般撮影及び乳房撮影散乱X線除去用グリッドの統合基準として制定されており、主な内容は物理的特性の、選択度(Σ)・コントラスト改善度(K)・露出倍数(B)を決定する試験条件を、きわめて厳しい制約のもとに規定している事と、従来の規格で使用上必要な幾何学的特性の平面度・平行度・直角度・均一性を残して規定しております。
Q2. リスとグリッドはどう違うのですか?
A. リスとグリッドは使用目的・構造も全く同一のX線撮影用具です。現在はJISでZ4910「散乱X線除去用グリッド」として規格化されております。また、薬事法上では「X線用グリッド」と呼称されております。1930年代に(E.Lysholm)リスホルム博士(スエーデン)によって現在のグリッドの原型が考案され博士の名前に因んで「リスホルムブレンデ」と呼ばれ普及しました。そして日本国内では更に略して「リスホルム」とか「リス」と呼称されていたのが由来です。
Q3. グリッドはどうやって作るのですか?
A. 簡単に説明しますと、先ず、短冊状のアルミ板と鉛ハクを指定集束距離に合わせ、交互に積層し、接着した板状のものを作成します。これを指定のグリッド比(ハク高さ)に切削加工し、カバー材(主にアルミ)を貼り、塗装などを施したものがグリッドです。言葉では簡単ですが、材料のアルミ板、鉛ハクの厚さ測定検査、X線撮影による集束精度、異物混入の有無など数度の工程内検査を経てグリッドは作られます。弊社では、1999年 ISO9002の認証を取得し(認証番号JQA-QM4013)更なるグレードアップを目指しております。
Q4. グリッドの良し悪しは何で決まるのですか?
A. グリッドに要求される基本的な性能は如何に散乱X線を効果的に除去又は減弱させるかに懸かっております。表現を変えて定義すると一次X線の透過が多く、散乱X線の透過は少ないグリッドが良いグリッドといえます。この散乱X線除去効率を定量的に評価する手段の一つにJISで規定している選択度(Σ)・コントラスト改善度(K)・露出倍数(B)があります。これらは個々のグリッドの性能値としては参考になりますが決定的評価要素にはなりません。他面での評価として均一性を保証するフィルム検査なども判定の基準にされたら良いと考えます。
Q5. 高密度グリッドってなんですか?
A. MSグリッドでは60本/㎝以上のものをいいます。グリッド密度が高くなる程、縞目の目立たない静止使用で読影しやすい画像を得ることができます。弊社ではデジタル時代に向けて80本/㎝はもとより、現在では100本/㎝のグリッドも製作する事が可能となりました。高密度グリッドの利点は、①被写体と受像面を最短化し、不鮮鋭原因となる幾何学的拡大を最小限に抑え②ブッキ装置の運動による機械的不鮮鋭をも解消します。③グリッドの運動による集束ズレで発生する一次X線のロスが回避されて、④ストロボ現象の心配もなく短時間撮影が行える等々が挙げられます。しかし幾つかの注意点を挙げますと、集束精度の高い優れた濃度均一性をもつ高品質グリッドを選定する事、そして低密度グリッドと同等のコントラストを確保し、同一の露出倍数とするには、低密度グリッドの1ランク上のグリッド比を選択する事です。例えば、40本/㎝ 8:1に匹敵する60本/㎝グリッド比は10:1になります。では何故1ランク上なんでしょうか?グリッドの性能で大切な要素である散乱線の除去率はグリッドに含まれている鉛の量が大きく関係しております。40本/㎝ 8:1と60本/㎝の10:1は鉛重量がほぼ同じになるため、同一条件で効率の良い60/㎝グリッドが使える事になります。なお、詳しくお知りになりたい方は別途資料をご請求下さい。
Q6. クロスグリッドとはどんなグリッドですか?
A. クロスグリッドは2枚の直線グリッドをハクが直交するように重ね合わせて作られたグリッドです。散乱線の多い部位や、高電圧撮影を目的に設計されたグリッドで現今は殆ど需要はありません。理由として、ポジショニングの(上下、左右のセンターリングを確実に行わなければならない)難しさや、クロスに重ねた分入射断面積が小さくなり情報量の低下を招きます。シングルグリッドと同一コントラストであっても、線量増加というマイナス条件が発生し、結果として効率的でないとの評価があります。加えて、高密度・高グリッド比の普及でますますクロスグリッドの出番がなくなったのが現状でしょう。
Q7. 長尺グリッドはどのような撮影に使うのですか?またどのように作られるのですか?
A. 下肢撮影や側弯症の全体像など、半切フィルムに取り込めない部位の撮影に対応しております。構造的には、複数のグリッドを被覆する前に同一ハク方向に継ぎ合わせた後にアルミカバー材(1枚板)で被覆して一体化(1枚)にしたグリッドです。従いまして継ぎめの現出は避けられません。弊社では、60本/㎝ グリッド比 8:1~14:1・40本/cm 6:1~12:1・34本/cm 5:1~12:1のグリッドで外形寸法400×1095㎜以内のものまで製造可能です。また、使用にあたってはグリッド保護のため、カセッテ内蔵か、カセッテとの一体化をお薦めします。例:10×36のカセッテ用は、四切サイズのグリッドを3枚組合わせています。従って、継ぎ目は2ケ所になります。
Q8. 使用中のグリッドの縁が壊れてしまうのですが、何とかなりませんか?対策品はありますか?
A. グリッドはその構造上物理的衝撃に大変弱く、完全な保護方法はありません。グリッドの縁の修復は、その度合いにもよりますが基本的には不可能であるとおもいます。但し、修復が可能の場合でも内部(主に中心部)に損傷が無い事が条件です。弊社では、グリッドの縁の損傷等の防止策としてグリッド周辺部にステンレスフレームを施した『キャップ型』グリッドを2001年4月から発売致しました。詳しくはキャップ型グリッドの項目をご参照下さい。
Q9. グリッド比はどの様に選べば良いのでしょうか?
A. 使用管電圧、撮影部位、また被写体厚などによって一概には言えませんが、一定の画質が得られるというあくまでも標準的な目安ですが、100Kvを境に、100Kv未満を8:1以下、100Kv以上では10:1以上とするのが一番判り易いかとおもいます。また、これらの標準的目安をもとに、使用管電圧の10分の1をグリッド比の選定基準にされる事も参考としてご案内しております。
Q10. グリッド密度はどの様に選べば良いのでしょうか?
A. グリッド密度の種類は26本~100本/cmまで各種に及びますが、従来、汎用的に使用されてきた密度は一般直接撮影用では34本か40本です。近時60本グリッドの有用性が高く評価され、所謂買い替えの時期になりますと高密度60本グリッドにシフトされているのが実状のようであります。勿論、低密度のグリッドの利用分野も整形外科・一般クリニック施設等、又、ブッキ-装置で縞目消去しての使用や、動物撮影用等々60%近くの占有率ですがこれらの分野でも高密度志向になりつつあるようです。選択肢として撮影部位が挙げられますが、胸部でしたら迷い無く60本グリッドがお薦めです。特に肺野におけるグリッドラインの見え隠れは診断の障害となりましょうし、低密度では如何に均一性の優れたMSグリッドでも気になるところかとおもいます。また、従来ご使用の低密度グリッドを60本に換える場合は従来グリッド比より1ランク上のグリッド比をお選びいただくと、コントラスト改善度と露出倍数が近似しますので同一条件でご使用戴けて高品質の画像が得られます。
Q11. 胸部撮影と腹部撮影を1枚のグリッドで行うにはどの様なグリッドを選択すれば良いのでしょうか?
A. 1枚のグリッドで胸部と腹部を撮影する事は、グリッドの構造上の制約から問題があります。それは、胸部撮影距離と腹部撮影距離との差が大きい程、またグリッド比が高い程、両者の撮影距離での一次X線の減弱(カットオフとも呼ばれております。)が多く発生するからです。例えば両者の中間撮影距離を想定した、半切 10:1 150㎝ のグリッドを胸部180㎝で撮影するとフィルムの端の部分に20%、肺野で10%の減弱が発生し、腹部100㎝で撮影しますと、フィルムの端で59%もの減弱となります。JISに規定されている減弱40%以下の許容範囲は約110㎝が下限値ですから、半切/10:1/150㎝での胸・腹部兼用の場合は、胸部180㎝で20%、腹部110㎝で40%の減弱を容認されたうえでご使用下さい。グリッドは本来の集束距離に近ければ近い程、減弱が小さくなり集束距離から離れる程減弱も大きく、線量も増してきますのでこの事のご認識が必要かとおもいます。できれば撮影管電圧に合わせたグリッド比と、撮影距離に合わせた集束距離のグリッドを選択して戴くと画質はもとより、線量の軽減にも繋がると考えています。
Q12. 平行グリッドは距離が130㎝から無限大なので便利なグリッドと聞きましたが本当ですか?
A. 先ず、平行グリッドが汎用的なグリッドであると誤解されているのではないかと思います。平行グリッドは、集束(精度)を付ける技術が確立されてなかった時期に、初歩的な積層技術で生産されたグリッドです。平行グリッドは、その構造上入射面に対してハクが垂直なためカットオフ(減弱)の免れないグリッドでX線管焦点とグリッドが近くなる程カットオフが大きくなります。また、カットオフが避けられないために充分な散乱X線を除去するグリッド比が設定できないこともあります。平行グリッドを使用するのであれば、集束型では難しい撮影、例えば分割撮影、長い撮影距離、病室撮影等に限定されるべきでしょう。
Q13. 集束距離○○cm~○○cmと表示されているグリッドは、その範囲内で使用して構わないのですか?
A. MSグリッドの距離の表示は焦点(f0)のみ明記しておりますが、他社製品の場合f1~f2を表しているものがあります。グリッドの使用距離限界とは焦点範囲、フォーカルレンジなどといわれる、X線管をグリッドの中心線上に置いたとき診断に有効なX線像が得られるX線管焦点とグリッドの入射面間の距離のことで、その下限の距離をf1○○cm、上限の距離をf2○○cmで表します。JISではこの下限と上限の位置にX線管焦点がある時、グリッドの横方向の両端で40%のカットオフが生ずることを前提として計算で求めるよう規定しております。ご注意戴きたい事はこの下限、上限での撮影で完全な情報が得られる事ではないとのご理解が必要であります。従ってブッキ-撮影用のグリッドにこの許容範囲を適用いたしますと、カットオフが増大しますのでブッキ-用は指定の集束グリッドを使用すべきであります。因みに許容範囲は、グリッドサイズが小さいほど、グリッド比が低いほど、集束距離が遠いほど広がってきます。
Q14. ポータブル撮影に適したグリッドはありますか?
A. 病室撮影用として設計されたMS-3Pが活躍しております。軽くて取扱いが簡単です。ベッドサイド撮影での作業性の向上と容易なポジショニングが技師さん方に喜ばれております。特に女性技師さんの皆さんから優れものとのご評価をいただき、病院の廊下を走り回っている回診車のポケットにカセッテと仲良く納まっている人気商品であります。最近では、CR撮影・小児撮影・車椅子撮影等々利用範囲も広がってきております。詳しい情報は、MS-3Pの項をご参照下さい。
Q15. インタースペーサ(中間物質)としてアルミ以外にあるのですか?
A. 国内外ともにアルミを使用したグリッドが広く利用されておりますが他に紙(ファイバー)製もあります。嘗て、木(Wood)ベークライト製もありましたが、現在では製造されておりません。また、この他各種の合成樹脂も素材として考えられます。
Q16. 低吸収のカーボンで作ったグリッドはあるのですか?
A. 現時点では市販されていないと考えます。カーボンは低吸収素材のため、被曝線量面だけを考えれば中間物質材の対象の一つとなります。しかしながら、カーボンは厚さ精度の不均一性・吸収物質との接合強度・加工難度等コストも含めた観点から弊社では使用しておりません。但し、カーボン材の利点である低吸収性を活用し、カバー材として利用しております。
Q17. もっとX線吸収の少ないグリッドはできないのでしょうか?
A. 理想的には、X線透過部分が空気である事ですが、現在の製造技術では不可能と言わざるを得ません。弊社は現在アルミニウムグリッドに加えて40本/cmのファイバーグリッドの製造販売を行っておりますが、他の低吸収中間物質材の利用についても絶えず研究開発を重ねており、低吸収高解像度グリッドの開発に向けて鋭意研鑚努力を致しております。
Q18. CR処理した時、モニターの画面上にムラが出るのですが、これはグリッドのせいなのでしょうか?
A. 基本的にはグリッドのハクの方向と、CR装置の読取り方向を、直角に使用することで解消すると考えております。CRモニターの画面上のムラがフィルム画像では消えている場合がある様ですが、それはグリッドに起因したものでは無いと思われます。グリッドに起因するものは通常“モアレ”とか“干渉縞”と言われていますが、グリッドのハクの方向とCR装置の画像読取り方向が一致することが、主な原因と考えられます。グリッド密度(ピッチ)とCR装置読取りピッチの差が少ないと大柄な縞目“モアレ”の現象が起き、その差が大きくなると細かな縞目に見える“干渉縞”現象が起きるものと考えております。つまり、グリッド密度(本数)を変えたり、CRの読み取りピッチを変えたり、或いはグリッドのライン方向をIPカセッテに対して斜め位置に置いて撮影した画像をCR読取りする方法とか、いろいろなパターンにより現出したり目立たなくなったりします。
Q19. 最近、スタンド撮影で左右差が出る様になったのですが、これはグリッドのせいなのでしょうか?
A. 永年使用時で加圧によりグリッドが変形することはありますが、左右差が起きる原因としては管球とグリッド入射面との直交度の狂いが殆どです。装置メーカのサービスの方に依頼されることをお勧めいたします。なお、グリッド自体の濃度左右差やキズを調べる方法として、グリッド上下を逆さ(通常下部貼付けのラベルが上になる状態)にして撮影し、欠陥の対称的移動の有無を2枚の撮影フィルムでチェックされることをお勧めします。グリッドの定期保守管理を行っている施設におかれても、このグリッドチェック方法をお試しになられることをお薦め致します。



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